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ソラタネについて

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江戸時代には岡藩の城下町として発展した竹田市。
奥豊後とも呼ばれ、緑豊かな山々に囲まれた名水の里としても知られる。
そんな山紫水明の地は、名水だけでなく、瀧廉太郎や田能村竹田といった稀有な才能を生み、
現在は藍染め職人など若き作り手たちの挑戦の場となっている。
今も歴史の息吹が根付き、こんこんと名水が湧き続ける、
春の風薫る竹田市を旅しよう。

町を歩けば歴史の旋律が鳴り響く

空がいつもより高く感じられる。草木の香りを含んだ風が頬を撫(な)でると、日々の喧騒に毛羽立っていた心がふっと軽くなる。旅は、序曲から穏やかさと優しさに満ちていた。
豊かな自然からのギフトが旅人を出迎えてくれる竹田(たけた)市。その市街地を見下ろす天神山にある『岡城跡』は、町のシンボルともいうべき名所だ。岡城は1185年(文治元年)の築城と伝えられる古城で、江戸時代には岡藩中川氏の居城として明治に至るまで存続した。城の形が寝ている牛の姿に似ていたことから、別名「臥牛城(がぎゅうじょう)」とも呼ばれたそうだ。
現在の城郭は、初代藩主中川秀成(ひでしげ)によって築城されたもので、本丸、二の丸、三の丸、西の丸などの曲輪(くるわ)からなる。絢爛豪華な天守閣がそびえるでもなく、今は石垣や城門の跡が残るのみ。だが、それがいい。城を囲む高い山々が城壁となり、自然の川が堀の代わりをなす天然の要塞。石垣の縁に立てば、眼下は断崖絶壁で思わず足がすくむ。かつて九州を席巻し、勇猛で鳴らした島津軍の猛攻にも耐え抜いた難攻不落の名城であり、その堅牢さを雄弁に物語る遺構は、まさしく“兵(つわもの)どもが夢のあと”。決して派手さはないが、見る者の歴史ロマンと想像力をかきたてる魅力に満ちている。

名曲を生んだ古城は時代を超えて春を謳う

そして岡城といえば、竹田市ゆかりの作曲家・瀧廉太郎の代表曲『荒城の月』のモデルとなった城といわれている。廉太郎はこの地で多感な少年時代を過ごし、この岡城も遊び場のひとつだった。『荒城の月』は、その頃を思い浮かべながら作曲したのだろうか。また、ここはサクラの名所としても知られ、満開となる時期には、県内外からの花見客で大いに賑わう。『荒城の月』の冒頭、“春高楼の花の宴”は、今も変わらず、竹田の春を謳う風物詩なのだ。
廉太郎が12歳から約2年半を過ごした住居跡が、岡城のお膝元である竹田市の中心部に残っている。現在は『瀧廉太郎記念館』として公開されており、直筆の手紙や譜面など貴重な資料を展示。また、庭園は風に揺れる竹の音、下駄の鳴る音、庭の井戸や側溝を流れる水の音など、少年時代の廉太郎が聞いたであろう“音”を体験できるよう作庭されている。23歳という若さでこの世を去った稀代の作曲家を偲ぶ、風雅な計らいがなされている。
『瀧廉太郎記念館』をはじめとしたエリアは『歴史の道』と呼ばれ、岡藩の城下町として江戸情緒を色濃く残した地域でもある。土壁や漆喰の住居などが立ち並ぶ『殿町武家屋敷群』は、歴史情緒にあふれた通りで、撮影スポットとしても人気が高い。その殿町の一角にある『旧竹田荘(ちくでんそう)』は、江戸後期の文人画家で日本南画界の巨匠・田能村竹田(たのむらちくでん)の旧居。弟子たちの住まいだった『補拙廬(ほせつろ)』や竹田の隠居部屋だった『草際吟舎(そうさいぎんしゃ)』のほか、母屋が残されており、母屋の2階からは竹田が漢詩に詠んだ城下町の風景を望むことができる。
日本の音楽、書画に大きな功績と影響を与えた2人の天才に思いを馳せながら町をそぞろ歩く。風の音、小鳥のさえずりが耳に心地よい。彼らも通ったであろう道は、今も自然の音色に包まれていた。

SPOT(A)岡城跡

  • 大分県竹田市竹田2761

  • 0974-63-1541

  • 9:00~17:00

  • なし

  • 高校生以上¥300、小中学生¥150

  • 136台(無料)

  • 阿蘇くまもと空港より車で約105分

SPOT(B)瀧廉太郎記念館

  • 大分県竹田市竹田2120-1

  • 0974-63-0559

  • 9:00~17:00(最終入館16:30)

  • なし

  • 高校生以上¥300、小中学生¥200

  • なし

  • 阿蘇くまもと空港より車で約90分

SPOT(C)旧竹田荘

  • 大分県竹田市竹田殿町

  • 0974-63-9699

  • 9:00~16:30

  • 月、祝の翌日

  • 高校生以上¥300、小中学生¥200

  • なし

  • 阿蘇くまもと空港より車で約90分

2019年4月1日時点の情報です

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