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ソラタネについて

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乳白色や黒、透明釉など特有の釉薬が魅力。

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金澤一弘さん。

『丸尾焼』に初めて出合ったのは、近所の器ショップだった。コーヒーカップで、底の部分に釉薬がかかっておらず、ザラリとした土の触感が活かされていた。手のひらにふわっとのる丸み。パッと目を引く洗練された感じもあった。
『丸尾焼』は茶碗や皿、カップなど日々の暮らしに気軽に使える器の人気が高い。5代目の金澤一弘さんは「スタンダードを目指していきたい」と語る。日本語で“標準”。あって当たり前のもので、昔からあったような顔をしているもの。使う時に背伸びをしなくともいいものだ。話を聞いていて、金澤さんのそのひと言に、まるで吸い込まれるようだったあのカップとの出合いを思い出したのだ。なぜなら、そのカップは今も我が家では登場回数ナンバーワンだから。
「工業的に作られるものが増えるなか、焼き物はその流れに組み入れられていないもの」と金澤さん。人の手を経た工程が重なって、ようやく生まれる器。暮らしへ寄り添う気持ちがひと工程、ひと工程に刻まれる。
比較的大きな窯元である『丸尾焼』は大きな水がめ、つぼなどを焼き、“天草の瓶(かめ)や”として知られていた。昭和の中頃、食器や花器などの暮らしの器へ転向。そして、島内外に多くの陶芸家を輩出してきた。天草に窯元が多いのはこの窯元の功績でもある。現在6人の作り手がいて、個人の窯元では見られないような幅広い作品がそろう。店内はさながら器のセレクトショップのようで、あれやこれやと楽しみながら買物ができる。

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美術教員でもあった許斐さんは
作陶前にはアイデアスケッチも。

天草陶磁器には言葉で定義するような共通の作風はない。それぞれの窯元が、それぞれに探究を続けている。そのため、窯元巡りでは想像もしていなかったような作品に出合うことも。
大矢野島の東、維和島(いわじま)の山頂近く、『蔵々窯(ぞうぞうがま)』もそのひとつだ。窯主の許斐(このみ)良助さんは、『天草陶石』を材料に『べんがら』という酸化第二鉄を釉薬として使う。ややとんがった、独創性のある作品は、日常から離れた、どちらかというとアート作品。部屋に一つあればそれだけで空間が決まりそうだ。たとえば豚や犬、猫などの動物がモチーフの蚊やりはユーモラスさもある。
親しみやすさはご本人の許斐さんも同じ。自慢のコーヒーは美味しいし、音楽や料理など器以外の話も楽しい。おかげで陶芸体験は人気なのだそう。ぜひ一度体験したい。そして作品が生まれる瞬間にも立ち合いたいものだ。

SPOT(B)丸尾焼

  • 熊本県天草市北原町3-10

  • 0969-23-9522

  • 10:00〜18:30

  • なし

  • 15台(無料)

  • 阿蘇くまもと空港より車で約120分

SPOT(C)蔵々窯(ぞうぞうがま)

  • 熊本県上天草市大矢野町維和上1005(桜公園内)

  • 0964-58-0990

  • 10:00〜日没

  • 不定

  • 20台(無料)

  • 阿蘇くまもと空港より車で約90分

2019年11月1日時点の情報です

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